息をのんだ。そして、そのことを少し思い出した。
 誰かを失い、一人になったという孤独感。


 だから私は、一人になることに対して恐怖心を抱いているのかもしれない。


「ハルの親族はハルを引き取ることを嫌がって、施設に入れようとした。だけど、ハルの両親と仲が良かった俺の両親がハルを引き取った」


 私が話を続けてほしいと言ったのに、ずっとアキと彼で話が進む。信じられない事実を受け止めることでいっぱいいっぱいだった。


「じゃあ、津村の家に引き取られた時点で、ハルさんは……」
「もう、すべてを諦めたような感じだった。それから数日後、急に人が変わった。名前もヒナって言うし」


 二人は私のほうを見る。


「私はヒナだと思ったんだもん……」
「まあそんなことは置いといて」


 ……置いておくなら、私のほうを見なくてもよかったのに。


「俺たちは正直、めちゃくちゃ気を使った。ドストレートに負の感情をぶつけてくるヒナに、笑顔になってもらおうとした。でも、何日かしたらまた違う人になって……今度はハルって。俺はまったくもって何が起こったのかわかんなかった」


 彼でなくても、理解はできないだろう。
 こうして話を聞いている本人でも、混乱しているし。


「ハルは、ヒナのことを覚えてないみたいだった。俺の親は子供なりの現実逃避だろうって、特に気にしなかった」