そもそも、どうして私が何度もハルの体を乗っ取るような現象が起こるのか。


 それを考える必要があると思う。だが、自分だけでは記憶の抜けがあり、どう考えても自力で解決するのは不可能だ。
 だとしても、あの人には見捨てられたし、アキに協力を頼んだとして素直に引き受けてくれるだろうか。


 ……無理だ。


 私がぐるぐる悩んでいたら、アキが大きなため息をついた。


「言いたいことがあるならはっきり言えば?」


 突き放す言い方に違いはないのに、その言葉が妙に嬉しかった。


 ここまでストレートに言われたら、悩むことはないに等しい。


「私には、途切れ途切れの記憶しかない。だから、あなたが言う原因を、自力で探ることができない。だから……協力、してください……」


 やっぱり最後には少し怖くなって、声が小さくなってしまった。
 だけど、私がはっきり言ったことに満足したのか、アキは口角を上げた。そして声を殺して笑う。


「それ、どういう意味か分かって言ってんの?」
「え?」
「自分が消えるための協力をしてくださいって言ってるようなもんだよ?」


 しばらく何を言っているのかわからなかった。


 たしかにアキの言う通りだった。原因がわかったら、この体はハルのものになるということで、私は消える。