アキは厳しい口調で言った。
 それだけ、ハルという人が好きなのだろう。


「で?ハルさんと同一人物なの?別人なの?」
「わからない……」


 ここではっきり答えることはできなかった。
 本当に、自分が何者なのかわからなくて、そんな状態で断言していいことではないと思った。


 だけど、私がはっきりと言わなかったせいか、アキは顔を顰めている。


「……ごめんなさい」


 それは意図せずこぼれた言葉だった。
 まさかそんなことを言うと思っていなくて、私自身驚いた。


「謝るくらいなら、ハルさんを返して」


 私はどう返せばいいのかわからなくなって、助けを求めるようにあの人を見た。たしかに目が合ったのに、その人は目をそらした。
 なんだか、見捨てられたような気がした。


「……今まで、何度かこの人の体を乗っ取ってた、みたいで……でもいつも、それは数日だけで……いつの間にか日にちが経ってたりしてた」


 曖昧な表現だということは自覚している。
 だけど、これ以上いい言い方が思い浮かばなかった。


「でも、今回は数日で戻ってないよね」


 アキの言い方はずっと棘がある。
 私の説明も待ってくれない。


「それにはきっと、理由があるんだと、思う……」
「で、その理由は?」


 それがわかったら、苦労はしない。