学校に着くまでの間も気が重く感じたけど、門を潜ってからは心に鉛を埋め込まれたような気がするほどさらに気が重くなった。


靴を履き替える間も、教室までの道のりでも、考えているのは誰に挨拶をするかということ。


今まで誰とも関わりを持とうとしなかった人間が、突然自分から挨拶なんてしても、返ってくる反応は目に見えている。


良くても訝しげな視線を向けられ、最悪の場合には白い目で見られるかもしれない。


いわゆる陰キャラ扱いの私は、学校カーストでいう最下層にいて、いじめられこそしていないものの、好かれていないことはわかっている。


ひとりが好きなのだと思っている人もいるだろうけど、どちらにしてもいつもひとりでいる人間に話し掛けられたら身構えてしまうだろう。


しっかりとグループができている女子は、特にそういったことに敏感なのはよくわかっている。


もし、あの時みたいに失敗したら……。私はまた……。


「……っ!」


考え過ぎたせいか不安に襲われた私は、教室の手前で足を止めてしまった。


後ろにいた生徒たちは、誰ひとり私のことなんて気にも留めずに私を追い抜いていく。


あちこちで響いている明るい笑い声が、やけに遠くから聞こえてくるような気がした。