「あなた、本当に……」


そこで口を噤んだのは、“超能力者”なんて非科学的なことを言葉にしてしまうことに抵抗があったから。


超能力がないとは言えないけど、スプーンを曲げるような単純なものとは違って、色々と知られているというのは不気味になってくる。


「ストーカー……とかじゃない、よね……?」


だんだん怖くなってきて恐る恐る小さく言えば、クロは「え?」と零してきょとんとしたあとで盛大に吹き出した。


「な、なんで笑うのよ!」


そのままケラケラと笑い出した彼に強く言い放ったけど、余程おかしいのか笑い声が止まる気配はなくて……。


「俺、ストーカーするほど暇じゃないし、飢えてないから」


必死に堪えようとしている笑いをククッと漏らした声音でそんな風に言われた直後、抱いていた不安が吹き飛ばされたような気がした。


危機管理が甘かった自分自身を責めそうになっていた私は、クロの掴めない雰囲気に引き込まれていくのがわかった。


だけど、不思議とそれが嫌ではないから少しばかり……では済まないほどに厄介で、彼にだけはついつい流されてしまう理由を探した。


その答えが見つからないことはわかっていたけど、なにも考えないのはなんとなく嫌だったから……。