「一ヶ月間、よろしく」


漆黒の瞳が私の瞳を捕らえたあと、言葉がゆっくりと落とされた。


向けられた瞳は射るような強さではないのに、視線を僅かに揺らすことも許されないような雰囲気を静かに纏っていて、たった一度の瞬きすらできない。


それはまるで、心ごと真っ直ぐに向き合おうとしているかのようだった。


そして気がつけば、その選択肢しかないと言わんばかりにごく自然と小さく頷いていた。


不安はあった。


だって、人と関わりたくない気持ちも、過去の恐怖心も、とても鮮明に心に居座っているから。


刻まれたトラウマを拭えるとは思えなくて、“たったの一ヶ月間ではどうせなにも変わらない”と斜に構え掛けている私がいることにも気づいている。


だけど……。


「次の満月には、きっとなにかが変わってるよ」


すべてを見透かすように破顔したクロが穏やかな口調でそんな風に言うから、彼に懐かしさに似たものを感じていた私の頑なな心がほんの少しだけ和らいだのだ。


「今日の月は綺麗だな」


夜空を仰いだクロにつられて顔を上げれば欠け始めた蜂蜜色の月が浮かんでいて、次の満月を見る頃にはなにかが変わっているのだろうか、なんてことを心の片隅でぼんやりと思う私がいた――。