それは、きっとほんの少しだけ。


比率で言えば、1パーセントにも満たないほど、僅かなもの。


“変わりたい”と口にできるほどのものではなくて、漠然とした不安を和らげるためには変わるしかないということを心のどこかではわかっていたから、たぶん一方的な約束を守ったのだと思う。


だけど、やっぱり人と関わりたくなかったから、クロになにを言われても今までのままでいたかったのに……。


彼に突き放されると感じた瞬間、その手を掴みたくなってしまったのだ。


知らない人なのに、信頼しているわけではないのに。


このままなにもせずにクロとの関係を消してしまえば、なにか取り返しのつかないことになるような気がした。


根拠なんてないのにこんなことを考えている自分自身のことが、自分でもよくわからない。


「な、なにか言ってよ……」


口を挟ませなかったのは私なのに反応を求めるのは少しばかり勝手だったかもしれないけど、この三日間の彼の行動と比べればこれくらいは許容してもらいたい。


あくまで強気でいたくてクロから目を逸らさずにいると、彼が笑みを浮かべた。


「じゃあ、ふたりで頑張ろう」


「え?」


笑顔で頷かれたことが予想外で、思わずきょとんとしてしまった。