夜の公園に、沈黙が下りる。


昼間は賑やかな場所だけど、陽が落ちてしまえば閑静な住宅街の中にあるここに人が来ることはほとんどなくて、今夜も昨夜と同じように私たちしかいない。


クロは私を見つめたまま口を開こうとはしなくて、彼が私の言葉を待っているのがわかった。


公園を出ればすぐ傍に道路があるから車の音は聞こえてくるのに、どちらも話さないせいで私たちの間だけ音がなくなってしまったように思えた。


それはまるで、ふたりだけの空間に閉じ込められたような、なんだか不思議な感覚だった。


「千帆が本当にこのままでいいと思ってるなら、これ以上なにを言っても無駄か」


そんな中、不意に耳に届いたのは、ため息混じりの言葉だった。


「え……?」


「だって、千帆にその気がないなら、俺がなにを言ってもどうすることもできないだろ?」


なんで……?


残念そうに苦笑したクロを見た瞬間、頭の中を過ったのはそんなこと。


一昨日からずっと強引だったくせに今になって引いてしまうなんて、あまりにも唐突だし、そんな彼がとても身勝手に見えた。


たったの三日間でクロに散々振り回されていた私は、不安だけ感じさせられたまま手を引かれるのかと思うと無性に腹が立ったのだ。