ベンチに座っている私達の間には、少しだけ距離がある。


あえて距離を取って座った私との隙間を埋めるように、クロは頭を深々と下げた。


「本当にごめん」


「ちょっ……。なにもそこまで……」


たしかに怒っていたけど、三度の謝罪の言葉と頭を下げられたことに怯むように戸惑い、どうすればいいのかわからなくて慌ててしまう。


「いや、今のは俺が悪かったし、昨日の言い方も悪かったと思うから、その分も含めて謝罪したかったんだ」


昨夜、彼がツキのことを口にした時も、たしかに不快感を抱いた。


それを忘れたわけじゃないけどあえて口にしなかったのに、クロはちゃんとそのことを覚えていて、しかも謝罪をしてくれた。


その態度には誠意が見えて、彼のことを無下にはできない。


そして、それは今だけのことじゃなくて、これからも“そうなる”予感がした。


「もういいよ」


ため息混じりに零せば、ひと呼吸器置いてからクロが嬉しそうに笑った。


「ありがとう」


どうやら私の気持ちを察したらしく、もう怒っていないことを知って安堵したようだった。


「でも、友達の件は別だからね」


彼から向けられた素直な笑顔に気まずさが芽生え、ついぶっきらぼうに言ってしまった。