「やっぱり、友達はいらないと思ってるんだな」


「だって、人は簡単に裏切るじゃない」


「でも、懐いたペットは裏切らない、って?」


私の心の中を見透かすように苦笑するクロの口調に、反射的に眉をグッと寄せた。


「そういう言い方しないで」


「本当のことだろ?」


「ツキはペットじゃない。家族だから」


きっぱりと言い放つと、彼が目を小さく見開いた。


裏切るとか裏切らないとかよりも、ツキのことをペットだと言われたことの方が嫌だったのは、私にとってツキはかけがえのない大切な家族だから。


たしかに、友達のいない私にとっては唯一ツキだけが本音で話せる存在で、友達のように思うこともあるけど、それよりもまずは家族だと思っている。


「あなたにとってはただの猫かもしれないけど、私にとってはかけがえのない大切な子なの」


だから、それをちゃんと伝えておきたくてクロの瞳を真っ直ぐ見つめれば、彼はなぜか複雑そうな笑みを零した。


「ごめん」


その表情の意味がわからない私に、クロは素直に謝罪を口にした。


本当は腹が立ったし、続けて文句を言うもりだったけど……。


「俺が悪かった」


あまりにも素直な態度を前にして、それは出てこなくなった。