「千帆は有言実行の子だからな」


「なにそれ。私のことなんて……」


知らないでしょ、と言い掛けて口を噤む。


私はクロのことを知らないけど、彼はなぜか私のプロフィールを把握していたから、“知らない”とは言えなかったのだ。


ただ、とても不思議なことに、学校に来られるかもしれないという恐怖と不安はあったのに、クロに対してはそんな感情を抱いていなかった。


もちろん、初めて会った時やプロフィールを含めた自分のことを言い当てられたことは怖かったけど、今は彼自身のことはそんな風には思えない。


信頼しているかと言われればそんなことはないし、クロのことを怖くない理由はわからないけど……。


「千帆? どうかした?」


もしかしたら、彼の纏う優しい雰囲気にどこか懐かしさに似たような温かいものを感じるせいなのかもしれない。


「……あのさ」


「ん?」


気を取り直して口を開いた私は、笑みを浮かべるクロに少しだけ怯みそうになりながらも続けた。


「私、やっぱり友達はいらない。だから、もう……」


“ここには来ない”


そう言おうとしたのに、言葉が喉で引っ掛かったように出てこなかった。


そんな自分自身に戸惑う私に、彼は困ったように微笑した。