あっけらかんと言われて、なんだか面喰らった。


きっと明るく笑っていられるような話ではないはずなのに、クロの顔には無邪気な笑顔が戻っている。


こういう時、どんな反応をすればいいのかわからない。


人と付き合うことを避けてきた私には、コミュニケーション能力が欠如しているから。


私が普通に話せるのは、ツキだけ。


だから、この雰囲気をどう捉えればいいのかわからなくて、“また”間違ってしまうのではないかという不安が芽生えた。


だけど……。


「千帆」


そんな私の心を見透かすように、不意に温もりがそっと降ってきた。


顔を上げるとクロが笑っていて、頭の上にある優しい温度は彼の手から与えられたものだと気づく。


サァッ、と夜風が通り過ぎていく。


クロの柔らかそうな薄茶色の髪が揺れ、切れ長の瞳が緩められた。


この公園の電灯は明るく、彼の顔がよく見える。


黒目がちの瞳なのに全体的に色素が薄くて、白いTシャツから覗く肌も日焼けしていない。


「次はなに話そうか」


ポンポンと頭を撫でた手が離れたあと、クロが私を見つめながら首を傾げた。


「別になんでも……」


ぽつりと零した私は、たぶんもう彼のペースにはまっていた。