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翌日、いつも通りの一日を過ごした私は、陽が落ちるにつれて落ち着かない気持ちになっていた。
昨夜はあのまま立ち去った男性に呆気に取られたまま帰宅し、ツキに一部始終を話した。
話したところで返事をもらえるわけではないけど、ツキに話し掛けるのは毎晩のことだから、自然とあの出来事を説明していたのだ。
正直、名前すら知らない異性に会いに行くなんてバカげていると思う。
なにもされない保障なんてないし、昨夜はせっかく無事に帰宅できたのだから、今夜はなにもノコノコ行くことはない。
頷いてしまったから行かなければ約束を破ることになるけど、そもそも私があの男性のお願いを聞く義理はないのだから。
昨夜のうちにそういう結論が出たはずだったのに、つい時計を気にしてしまうのはどうしてなのだろう。
「……私、行かなくていいよね?」
ベッドに寝転んで胸元で抱いていたツキに訊くと、ツキは私の顔を数秒間じっと見つめたあとで前足で私の唇に触れた。
それがどういう意味なのかはわからないけど、いつものように鳴かないツキの瞳がなにか言いたげに思えて……。
『君と君の未来を少しだけ変えてあげる』
ふと、あの男性に言われた言葉を思い出した。