今日のバイトは二十時前に終わり、自宅の最寄り駅に着いた時は二十時半近くになっていた。


三年前となにも変わらない景色の中を歩き、いつものように公園に立ち寄る。


あの頃と同じベンチに腰かけると、グッと伸びをしながら夜空を仰いだ。


今日は奇しくも満月で、そこにはまんまるの月が輝いている。


クロとの別れを経験した十八歳の誕生日の夜、家に帰るとツキの姿はなかった。


誰もいない部屋の窓が開いていて、舞い込む夏風にカーテンがユラユラと揺れていた。


あの日の私は、彼がいなくなるということの意味を頭では理解しながらも、心のどこかではツキが家で待っていてくれるかもしれないという淡い期待を抱いていて……。


現実を突きつけられた瞬間、その場に崩れるようにしてワンワンと声を上げて泣いた。


クロとツキ……。


たしかに存在していた大切なふたりが、どうなったのかはわからない。


ただ、『いつかきっとまた会える』と思わずにはいられなくて、特に満月の夜は欠かさず公園に足を運んでいた。


……なんてね。会えるわけないよ……。


自分自身を諦めさせるために心の中で呟いた言葉に胸の奥が締めつけられるけど、泣きたくなったのをごまかすように深呼吸をして立ち上がった。