「心が弱かった猫は、毎日が怖くて未来が真っ暗に思えて、誰も信じられなくなっていったんだ……」


弱々しい声音で言葉が落とされたあと、クロの瞳がゆっくりと開いて私を見つめた。


「でも……」


そして、彼は優しい笑みを浮かべた。


「ある日、猫はひとりの少女と出会った」


私に向けられたとわかる笑顔の意味を、私はきっともうわかっていた。


「少女は、ボロボロの猫の姿を見てとても悲しそうな顔をしたかと思うと、ほとんど迷うこともなくすぐに家に連れて帰ったんだ」


だけど、クロの話を信じられなくて、自然と見開いていた瞳で彼の顔を見つめることしかできない。


「優しい少女が両親を説得してくれたおかげで、猫は新しい居場所を与えられた。それから、少女はその小汚い猫を必死に看病して優しく接したけど、誰も信じられずにいた猫はあろうことか少女を引っ掻き、何度も傷つけてしまったんだ……」


まさか……。そんなの、ありえないでしょ……? それなら、まだ超能力の方が信じられるよ……。


そんな風に思うけど、今はもう、クロが話しているのはツキのことだとしか思えない。


まるでありふれたファンタジー小説みたいだけど、彼の真剣な瞳がそれを肯定しているような気がしたのだ。