重い足取りで歩く私の頭上には、綺麗な夜空が広がっていた。


たくさん見えるわけではないけど星はいくつもあって、月は今日を待ち焦がれていたように満ちている。


今日が、最後。


頭の中で反芻するのはその言葉ばかりで、この数日で数え切れないほど吐いたため息には切なさが詰まっていた。


公園が見えてくると思わず足が止まってしまったけど、今日はそんなことをする時間すら惜しいのだと自分自身に言い聞かせ、再び足を踏み出した。


程なくして着いた公園には人の姿は見当たらなくて、静かな雰囲気の中、いつものベンチに向かっていたけど……。


すぐに見えたその場所にはまだクロの姿はなくて、今日はどうしても座って待つような気分にはなれなかった私は、噴水の方に足を向けた。


この公園の噴水は、底面が大理石のようなツルツルとした黒い石で造られていて、昼間は下から水が噴き上がる仕組みになっている。


水が噴き上がる場所は円形の噴水の中に等間隔で七箇所あり、水位は大人の足首の上辺りまでしかない。


夏になると小さな子どもたちが水遊びをする場になっていて、中学生たちがふざけて遊んでいることもある。


「千帆」


ぼんやりと水面を見ていると、後ろから聞き慣れた声に呼ばれた。