学校に行くと、教室に足を踏み入れた途端に堀田さんが駆け寄ってきた。


「ちーちゃん、ハッピーバースデー!」


「わっ……!?」


勢いよく抱き着かれて驚く私を、堀田さんの後ろからやってきた中野さんが笑いながら見ている。


「お誕生日おめでとう」


仲良くなったばかりのふたりが私の誕生日を知っているのは、この間うちに遊びにきた時に誕生日の話題になったから。


少し前には友達からお祝いをしてもらうなんて考えられなかったけど、まさか抱き締めて『おめでとう』と言ってもらえるなんて、私には勿体ないくらいだと思った。


「ありがとう」


それでも嬉しくて笑顔を見せると、私から離れた堀田さんが「はい!」と満面の笑みで紙袋を差し出した。


「え?」


「ちーちゃん家に遊びにいった日の帰りに、中ちゃんと買いにいったんだ!」


可愛らしいロゴの入った紙袋は、ルームウェアと生活雑貨を中心に展開している人気のお店のもの。


「ほっちゃんと話し合って、ちーちゃんのイメージで選んでみたの」


目を見開いて驚く私を余所に、ふたりはニコニコと笑っている。


お礼を言うだけで精一杯だったけど本当に嬉しくて、ほんの一時だけ夜が来ることへの悲しみが和らいでいた──。