指差された問題用紙の問六は得意な問題だったから、計算ミスをしていなければ間違っていないとは思うけど、勉強を教えることに苦くて痛い思い出が強く残っているせいで、正直に答えるべきなのか悩んだ。


また、失敗してしまうかもしれない。


堀田さんはあの四人とは違うのだろうけど、教えるのは“私”なのだから……。


「あれ、わからなかった? 松浦さんならいけると思ったんだけどなー」


「もう、ほっちゃん! 松浦さん、困ってるじゃん。ごめんね、松浦さん。気にしないで」


眉を寄せて笑う堀田さんをたしなめるように話した中野さんが、気まずそうな笑顔で私を見た。


それは微妙な表情ではあったけど、謝罪とともにホッとされたことはなんとなくわかって、出しゃばらなくてよかったと思った。


中野さんだって、私なんかに教えられても困るよね。私じゃなくても、ふたりなら教えてくれる友達くらいいるだろうし……。


心の中でそんなことを呟いたのは、少しだけがっかりした気持ちを抑えるためだった。


堀田さんが声を掛けたくれたことは嬉しかったし、本当は解けたことを言いたかったけど、臆病な私は不安に負けてしまったから、まるで正論のような言い訳を探して強引に諦めようとしたのだ。


だけど……。