「え? ……私?」


声を掛けられたことも、そのボリュームが大きかったことにも驚いてキョトンとすると、堀田さんがプッと吹き出した。


「デジャヴ!」


「え?」


「ノート貸した時と同じ反応なんだもん!」


ケラケラと笑う彼女に呆気に取られているのは私だけではないようで、中野さんも目の前の光景にポカンとしていた。


「……え、ほっちゃん? 急にどうしたの?」


「あ、そうだそうだ」


その質問に落ち着きを取り戻した堀田さんが、にっこりと笑って数学の問題用紙を手に取った。


「松浦さん、ここわかる?」


「えっ!?」
「はっ!?」


当たり前のように尋ねられて、私と中野さんの驚きの声が重なった。


「え、ちょっと……。急になに訊いてるの? 松浦さん、びっくりしてるじゃん」


「松浦さんなら頭いいからわかるかと思って」


あっけらかんと答えた堀田さんに反し、私よりも驚いているように見える中野さんは明らかに戸惑っている。


その表情から気まずさを読み取ることができて、どう反応すればいいのかわからなかったけど……。


「もしわかるなら、教えてくれない?」


そんな私たちの気持ちなんて気にする素振りもない堀田さんは、ごく普通に笑顔で言った。