きっと、なにかが変わる。


今なら、変わることができる。


今まで無理だと思い続けてきたはずだったのにそんな風に思う私は、もしかしたらクロの言う通り、もう変わり始めていたのかもしれない。


だったら、もう少し踏み出せば、今よりももっと変わることはできるはず。


「クロ……」


「ん?」


勇気を出して震えそうな声で呼ぶと、見つめ合っていた彼の瞳がそっと弧を描いたから、目頭が熱くなる。


「本当は、私……」


今度は完全に声が震えていて、次に口を開けば涙を堪えることはできないとわかっていたけど……。


「変わりたい」


胸の奥に秘めていた想いをゆっくりと声にして、真っ直ぐに向き合ってくれているクロに本心を伝えた。


すると、彼はふわりと破顔した。


「知ってるよ、もうずっと前から」


本当なのか嘘なのかわからないセリフを口にしたクロに、いつもなら悪態のひとつでもついたのかもしれないけど、今日の私の唇はそんな言葉を紡がない。


余計なことを言えば素直な気持ちを隠してしまいそうだったから、なにも言わずに彼を見る。


そのまま自然と微かに綻んだ頬に一筋の雫が伝い落ちて、温かい涙を隠すように上弦に近づく三日月が浮かぶ夜空を仰いだ──。