クロにすべてを打ち明けたあと、沈黙が訪れた。


なにも言ってくれないことが不安だったし、彼がどんな顔をしているのかが気になった。


顔を上げるのは、怖い。


それでも、クロの表情を知りたい。


葛藤の末に意を決し、小さな深呼吸を二回繰り返してからゆっくりと顔を上げた。


「…………え?」


その瞬間、瞳を見開いてしまった私は、まるで引力のように惹き付けられた彼から目が離せなくなった。


だって……。


「なんで……クロが泣くの……?」


クロの漆黒の瞳に、今にも溢れ出してしまいそうなほどの涙が浮かんでいたから。


ベンチの隣に立っている電灯の光に反射した雫は、キラキラと光っているようにも見えた。


「ごめん……」


「え?」


ぽつりと零された謝罪の意図がわからずにいると、彼は眉を寄せて再び口を開いた。


「千帆がつらい時に助けてあげられなくて、本当にごめん……」


悲しげな声音が、クロの本心だということをどんな言葉よりも雄弁に語っていた。


その予想外のセリフに驚いてなにも言えなくなった私は、瞳を見開いて彼を見つめることしか出来ない。


その最中、鼻の奥にツンと鋭い痛みが走り、胸の奥にはグッと熱が込み上げてきた。