「部活でお世話になってたっていうのもあるけど、もともと一番好きな先生だったから話せたんだと思う」


芝田先生に話した時、養護教諭は席を外してくれた。


保健室に誰も来ないように鍵を掛けてくれたこともあって、泣きながらも打ち明けることができて……。


ひとりで抱え込んでいた私は、あの時ようやくほんの少しだけホッとしたような気がする。


だけど、現実はそんな単純な話ではなかった。


芝田先生は事情を察していたようで、話を聞いたあとも特別驚いたような顔をすることもなく、ひとまず両親や担任にも相談することを提案してきた。


私も、とても心配してくれていた両親にはそうする方がいいとは思ったけど、自分の娘がいじめられているなんて知った両親のことを傷つけたりがっかりさせてしまうのではないかと考えると、不安が先行して気が進まなかった。


担任に話して状況が悪化するのも怖くて、どちらの提案にも頷けずにいると、芝田先生はその場では一旦保留にしてくれた。


ただ、こんな不安定な状態を隠し続けることなんてできるはずがなくて、芝田先生に打ち明けてから一週間もしないうちに養護教諭と担任を交えて話をすることになり、その翌週には担任から両親に電話で事情を説明された。