勇気を出して声を掛けても避けられ、できる限り目を合わせないようにされ続けるというのは、思っているよりもずっとダメージが大きい。


まるで、存在がないもののように扱われる日々に孤独と不安が鈍い音を立てて積もっていき、誰からも相手にされない場所にいるのは怖くて息苦しくて……。


身体的にはなにもされていなくて痛みもないのに、心には無数の傷が鋭利に刻まれていく。


そして、刻み込まれた傷は、三年という月日が経っても消えてくれることはなかった。


「誰も助けてくれなかったのか……?」


思っていた以上に沈黙していたのか、ずっと静かに話を聞いていたクロからそんな疑問が出た。


瞳を伏せたまま、首を小さく横に振って否定を告げる。


「美術部の顧問だった先生と保健の先生は、親身になってくれた。それから、親も……」


あの悪夢のような始業式の日に私を保健室に連れて行ってくれた芝田先生に、始業式から二週間が経った頃にようやく事情を打ち明けることができた。


何度か仮病を使って休み、嘘をつくことが心苦しくなって勇気を出して登校しても、教室にいるのがつらくて保健室に逃げる。


そんな日々を繰り返す中、芝田先生は保健室で過ごす私の様子を必ず見に来てくれていたから。