「前から訊いてみたかったんだけど」


今度は控えめな声が聞こえたかと思うと、そのまま沈黙が下りてきた。


言い難そうに私を見ているクロが口にしたいのは、私にとっては嫌なことなのだと察したけど……。


「千帆はさ……」


なんとなく口を挟んではいけないような気がして、少しだけ緊張感を抱きながら待っていた。


「……あ、別に無理に訊き出すつもりはないし、答えたくなかったら言わなくていいから」


本題の前にわざわざこんな台詞を入れるということは、よほどデリケートな問題なのだろう。


そう察した直後にこれから紡がれる質問もなんとなく予想できて、一気に気が重くなる。


「なんで、今までずっと人と関わることを避けてたんだ?」


ただ、予想通りの言葉を耳にしたことで胸の奥が苦しくなっても、核心に触れた彼に対して嫌悪感を抱くことはなかった。


今まで訊かれなかったことの方が不思議だったし、クロの真剣な表情を見ていると私と向き合おうとしてくれているのは伝わってきたから。


「……超能力者なのに、わからないの?」


そんな風に尋ねてみたのは、彼が私のことをどこまで知っているのかという疑問をすっきりさせたいと常々思っていたからで、決して反抗心なんかではなかった。