「……なんで、なにも言わないの?」


話が終わってもすぐに口を開かないクロに違和感を覚え、眉を下げてしまった。


正直、もっと喜んでくれるかと思っていたからなんだかがっかりしてしまって、彼がどうして微妙な顔をしているのかわからないけど、なにか気になることがあったのだということだけは察した。


「あぁ、ごめん……」


「言いたいことがあるなら、はっきり言ってよ」


「そうだな」


困ったように微笑むクロは、言い難そうにしながら私を真っ直ぐ見つめた。


「千帆なりに努力してることはよくわかってるし、その子から声を掛けてもらえたのだってその成果だと思ってるよ」


ゆっくりと言葉を紡ぐ彼の口調は優しくて、このあとに聞かされるのは私にとってはあまり良くない内容になるのだとわかる。


だけど、クロの微妙な顔を見てしまったからには、その理由をちゃんと知りたいと思った。


黒目がちの瞳を真っ直ぐ見つめ返すと、彼は私の気持ちを察するように続けた。


「でも……俺は、相手からのきっかけで会話をするんじゃなくて、千帆から話し掛けてほしいんだ」


優しいままの声音にハッとした私は、ようやくクロの表情の意味を理解し、みるみるうちに心が重くなっていった。