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翌日の土曜日も、公園にやって来た。
カレンダー通りに出勤する両親が家にいたから、塾でもない日の夜に出掛ける私のことを怪訝に思っていたみたいだけど、コンビニに行くと言うと送り出してくれた。
「千帆は、とりあえず笑顔を練習しようか」
「笑顔って……。別に楽しくもないのに笑えないよ」
「楽しいから笑えって言ってるんじゃなくて、楽しくするために笑うんだよ。ブスッとしてるような無愛想な奴に話し掛けたいとは思わないだろ?」
「……そりゃそうかもしれないけど」
「ほら、笑ってみろ」
「え……」
「こうやって、口角を上げるんだよ」
「ほら」と言葉通りに口角を上げたクロは、あっという間に好意的な笑みを見せた。
それから笑顔を作るように促され、ため息をひとつ零してから私なりに精一杯頑張って唇の両端を上げてみたけど……。
「顔が引き攣ってて、ちょっと怖い」
その様子を見ていた彼が、独り言のようにぼそっと呟いて苦笑した。
「だからっ! 楽しくもないのに、いきなりそんなに簡単に笑えるわけないじゃない!」
ついカッとなって苦笑いしたままのクロに強く言えば、彼は慌てて取り繕うように微笑んで「怒るなよ」と零した。