犬に人生? わたしはその部分にはあえて突っ込まない。

「そんなわけで俺は願ったんだ。

 イワヤマさんに、『犬にならせて下さい』って。

 一晩かけて。

 君がぐっすり眠り込んでしまった横で、布団に頭から潜り込んで、目をつぶって、手を組んで。

『イワヤマさん、イワヤマさん、どうか僕の望みを叶えてください。できれば毛並みのいいゴールデンレトリバーがいいのですが』って心の中で唱えるんだ。

 なあ、言葉にすれば簡単だろう?

 でも本当にそれを叶えるだけの祈りっていうのは、言葉で表せるほど生易しいもんじゃあない。

 心の底で休むマグマを沸騰させるように、強く祈るんだよ。

 仕事で憔悴しきった体で精神的マグマを沸騰させるっていうのは、結構骨が折れるんだぜ」