リュウヘイ君は、犬の世界では礼儀正しきポーズであるはずの「おすわり」の姿勢がいまひとつ自分の新しい体に馴染まないのか、フローリングに腹ばいになった。

 ぺたんと体が床にくっつくと、それが心地いいのか、幾分リュウヘイ君の目つきは柔らかくなった。

 わたしも寝転がって彼の話を聞くことができればどれほどよいだろう。

 でも人間の姿のわたしが床に寝転がっては、それはただのぐうたらでだらしのない妻のようで、気が引ける。

 結婚して三年目とはいえ、リュウヘイ君のことは今でも新婚のときのように愛しているのだ。

 彼の前で自分の怠惰な姿恰好を曝すのは御免だ。