「えーっと、姫野さん。とりあえず、接客とレジ打ちからね。あとは返却処理と……」
「えっ……?」
 
 ヒゲを蓄えた丸々とした中年の店長が、人のよさそうな笑みを浮かべながら信じられないことを言いはじめた。

 そんなの聞いていない。

 バイトの制服である紺色のポロシャツを着た私は、
「倉庫での……作業じゃ……」
 と、中途半端にぼそぼそと聞き返した。

 ここは、私のバイト先。CD・DVD・コミックのレンタルや販売、買取りをしているお店『レンタクル』のスタッフルームだ。市と市の境にある個人経営のそんなに大きくない店だった。もっと街のほうまで行けば似たような大きなお店もあるけれど、このあたりの人たちからは愛されていて、客足もまずまずらしい。

「あぁ、それは表の業務を覚えてからね。最初はみんなレジからだよ。じゃなきゃ、ピンチヒッターできないでしょ? それに裏方作業は、ある程度知識と経験ためこんでもらわなきゃわからないところもあるし」

 そんな……。