『ふ』

 央寺くんの勝ち誇ったような笑みが、少し熱くなったスマホから耳に伝い、悔しさが増す。

「……今日は、寝なかったんだね」

 皮肉半分でそう言うと、
『バスケがなかったからかも。体育館使えなくて』
 と返ってくる。

「バスケ? 部活?」
『そう』

 そういえば、明日美さんが言っていたっけ、バスケ部だって。
 私は央寺くんが王手をかけた金将をつまみあげ、それをぼうっと眺めながら思い出す。

『姫野は何か部活してるの?』
「……何もしてない」
『弟の将棋には、まだつきあってる?』
「ううん。反抗期真っ只中で、あんまり口もきいてない」
『へぇ』