「ちょっと変わるね。垢抜ける」
「そ、そうですか?」

 褒め言葉として受け取っていいのか判断しかねて、お礼を言うのをためらう。こういうところで、コミュニケーション能力の不足を実感してしまう。

 難しいな。こんなつまらない私なんかと仲良くなってもらおうとは思わないけれど、せめて円滑な関係を築きたいし、スムーズに話せるようになりたい。ここでバイトを続けるためには……。

 そこまで考えたところで、自分がバイトを続ける気があることに自分でも驚いた。ちょっと前まで“バイト 辞め方”と検索していたというのに。

「律さー、優しいでしょ?」
「え? あ、あぁ……はい」

 どことなく牽制している感じがするのは気のせいだろうか。明日美さんはきれいなロングヘアの黒髪をうしろでひとつに束ね直しながら話す。色白で凛としていて、女の私から見ても色っぽく見えた。

「私さ、いっぱいしゃべりすぎる男って苦手なんだよね。その点、律は聞き上手だし、さりげなく優しいし、自分が自分がって感じじゃないし、好きなんだよね」
「は……はぁ」

 好きって……どういう意味の好きだろう。そう思ったら、胸の奥がざわりと騒いだ気がした。