「……三回だけ」

 ほしかった色はもう持っているのに、なんでやる気になったのか、自分でもわからない。でも私はそうつぶやいて、中腰になって硬貨を投入口に入れた。つまみを回し、一回目の丸いプラスチックケースを覗く。中身は、赤だった。

「……赤」

 続いて引くと、また赤だった。もしかして、三回とも赤だったりして、と思いながら、最後につまみを回すと、今度は緑が出てきた。それを見て、思わず小さく笑ってしまう。

 店を出て、その三つをコンビニ袋の中に一緒に入れた。赤ふたつと緑ひとつという収穫。思い出したのは、央寺くんと殿村くんの顔だった。

 まるでふたりに渡すために引いたようなものだ。でも、ふたりの嬉しそうな表情を想像すると、わくわくしている自分もいる。私は今度渡してあげようと思って、足取りも軽やかにバイト先へと向かった。