『この辺りです』

 不意に美由紀の声が降ってきた。詠斗はぴたりと立ち止まる。

『この白い軽トラを覚えています。ここで振り返って、誰かに襲われました』

 美由紀が言う軽トラックは、例の階段を背にして右側の家のガレージに停められていた。シャッターはいつも開けっぱなしなのだろう。

 詠斗は改めて階段のほうを振り返ってみる。
 ゆるやかにカーブしてはいるが、この場所までおよそ一直線。いくら小柄な美由紀とはいえ、夜道を百メートルも人ひとり担いで歩くというのはかなりしんどいはずだ。やはり美由紀の証言通り、男の仕業だと思いたくなる。