「……それはこっちのセリフですよ、先輩」

『ここへ来るつもりだったのならそうおっしゃってくれれば良かったのに』

「仕方ないでしょう、昼間は邪魔が入ってしまったんだから」

 そう答えながら、詠斗は階段の中央に設置されている手すりの支柱に先ほど作ってもらった花束を立て掛けた。けれど、重みですぐにコテンと横倒しになってしまい、通行の妨げにならないように改めて寝かせた状態で置き直した。

『それ、私のために?』

「手ぶらで来るのは失礼かなと思って」

 元々は、事件のあった場所を自分の目で確かめてみようと思ったのがここへ足を運んだきっかけだった。花を買ったのは完全な思いつきだったけれど、美由紀の冥福を祈ろうと思った気持ちに嘘はない。