「本当だ。遺体が出たのは昨日の夕方だが、死亡推定時刻は一昨日の午後七時から九時の間。仲田翼の自宅近くに竹林があって、少し奥に入ったところで見つかった。普段からひとけのない場所で、犬の散歩で通り掛かった女性が犬がやたら吠えるのを不審に思い、林の中に踏み込んで発見に至ったという具合だ」
犬の嗅覚は人間よりはるかに優れているから、腐敗の始まった死体の臭いに反応したというところか。――しかし。
「仲田先輩が殺されたのは一昨日の夜なんだよな? 犬の散歩なら朝も行きそうなものだけど……」
「毎日少しずつルートを変えているのだそうだ。昨日の朝は発見現場の前を通らなかった。犬にとっては毎回同じ場所にマーキングしたいのだろうが、人間には飽きがくるからな」
そういうことか、と詠斗は納得したように呟いた。
殺害方法は異なるものの、殺害時刻はおよそ同じ時間帯だ。二つの殺人が同一犯の仕業だとすると、この時間帯にこだわらなければならない理由でもあるのか――。
顎に手をやりながら考えていると、傑に肩を叩かれた。詠斗はそっと顔を上げる。