「じゃあ私は、美由紀先輩の周辺から探りを入れてみる」
「え」

「よし、じゃあオレは翼くんのほうだな。……まぁ、オレの人脈じゃあんまり当てにならないかもしんねぇけど、引きこもりの詠斗が三年生の輪の中に飛び込んでくよりはマシだろ」
「ち、ちょっと待てよ」

 詠斗は何やら分かり合っている風の二人の間に割って入った。

「お前ら、俺の話聞いてたか?」
「聞いてたよ。美由紀先輩を殺した犯人を捜すんでしょ?」
「それはそうなんだけど……っ」
「何だよ、水くせぇな。耳が不自由な高校生と幽霊のコンビなんて、不安以外の感情が生まれる余地ねぇぞ?」

 この巧の一言にはさすがの詠斗も言い返す言葉が見つからなかった。

 実のところ、美由紀と二人で何ができるのかと問われれば、何ひとつ満足に事が運ぶ気がしないなと詠斗自身も思っていたところだったのだ。

 何せ幽霊の証言をもとに追い詰めた犯人だ、証拠能力もなければ説得材料にすらならない可能性が高い。言い逃れの効かない確たる証拠でも見つかれば話は変わってくるのだろうが、果たしてそこまでたどり着けるかどうか――。