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 授業中、詠斗は隙すきを見計らいながら紗友の話を振り返っていた。

 二人目の被害者は、胸を刺されて殺された。

 一人目の羽場美由紀とは手口が違う。刺殺なら、美由紀の時のように事故に見せかけることは難しいはずだ。二つの事件が同一犯の犯行だとすると、ここまで殺害方法に違いが出てくるものだろうか。

 見方を変えれば、同一犯による殺害の可能性を警察に否定させるためにわざと別々の手口を使ったとも考えられる。そうだとすると、犯人は綿密な計画を立てて事に及んでいるということか。

 もちろん、美由紀殺害とはまったく別の意思が働いていて、たまたま同じ創花生が立て続けに殺されただけかもしれない。いずれにせよ、今の段階では判断材料に乏しすぎる。

 そんなことを考えているうちに、昼休みの時間がやってきた。アラームがセットされていることを確認しようと携帯をズボンのポケットから取り出すと、傑からのメッセージが届いていた。

【羽場美由紀と仲田翼の交遊関係を探ってくれ。二人の間に共通する人物がいればピックアップしてくれるとありがたい】

「おいおい……」

 要するに、詠斗を使って美由紀から直接情報を引き出そうという腹づもりなのだ。まったく、いざ自分が事件の担当になったら途端にこれだ。使えるものはとことん利用する。刑事部というのは総じて忙しい部署だ、そうまでしても事件解決を急ぎたいということか。

 しかし、やはり警察も美由紀と仲田翼の事件に繋がりを探ろうとしているようだ。もしも犯人が二つの殺人を別の動機による無関係なものであると警察に思わせることを意図したのなら、ここでもまた警察に読まれてしまったことになる。二度も続けて? そんなことがあるだろうか。