肩より少し長いくらいのつややかなストレートヘアに、くるりと丸い茶色がかった瞳。美人というよりは可愛らしい女の子というほうがしっくりくるようなやや幼げな容姿だが、クラスの顔としての見栄えは申し分ない。インテリメガネの出木杉君が先頭に立つより、こういう人懐っこそうな女子のほうが何かと受けはいいものだ。

「詠斗が少しでも過ごしやすいクラス環境になればな、とは思ってるよ」

 そう言って、紗友は転落防止柵の際に腰を下ろし、校内の購買店で買ったのか、市販のメロンパンの包みを開けた。詠斗はまたひとつ息をつき、あと一口分の白飯と最後の一つになっていた唐揚げを一気に平らげた。

「前から言ってるけど、本当に心配してくれなくていいぞ? 俺のことは」

 空になった弁当箱を片付け、詠斗はさっと立ち上がった。

「今の耳になってもう三年だ。余程困ったことがない限り、他のヤツらと変わらない生活を送れてる。俺は俺なりになんとかやっていくから。だからお前も……」
「――××××」

 紗友の口元がもそもそっと動いたが、何と言ったのか読み取れなかった。すくっと紗友は立ち上がる。

「私の気持ちは、変わらないから」