「そうなんだよ」

 傑は肩をすくめた。

「だから現場の捜査員は手をこまねいているんだ。参考人として松村知子の名前を上げたのも苦し紛れと考えてもらって差し支えない」

「なるほどね、現場の状況からじゃにっちもさっちもいかないから、先輩の交友関係から犯人を炙り出そうとしてるってことか」

「そういうこと。なんでも、松村知子が事件の前日、被害者と激しく言い争っていたのを同じ創花の生徒が目撃しているらしくてな」

 これはまだ美由紀からもたらされていない情報だった。知子が容疑者扱いされているというのはケンカが原因だったのか。

「お前が被害者から聞いた話じゃ松村知子は犯人ではないということだが、彼女は身長一六七センチ。女子にしては大柄で、男と見間違えたとしてもおかしくはないな」

「けど、先輩は松村さんと特に仲が良かったって紗友が言ってたし、いくら夜道だったからといって友達を見間違えたりするかなぁ……?」

「紗友が?」

 その瞬間、傑の目がきらりと光った。