「何か気付かないか? それを読んで」

 そう問われるも、詠斗にはすぐにピンと来るものはなく、そんな顔をして兄を見やる。すると、傑は穂乃果のほうへとわずかに顔を向ける。

「それでは穂乃果君。キミの意見を聞こうか」

 少し目を大きくした穂乃果は詠斗から資料を受け取り、詠斗と同じく一ページ目にざっと目を通した。

「あぁ、なるほどね。詠斗がこの被害者の女の子から聞いた話だけでは、犯人が男だとは言い切れないってことでしょ?」
「ご明察」
「えっ、なんで?」

 何やら分かり合っている夫婦の間で、詠斗だけが眉間にしわを寄せていた。

「もう一度よく読んでみろ。特に被害者の身体的特徴について」