――この人が、羽場美由紀先輩。
詠斗はこの時ようやく美由紀がどんな顔をしているのかを知った。なるほど、あの穏やかな口調がよく似合う、良家のお嬢様っぽい綺麗な人だ。
写真で見てもわかるくらいのつや髪は黒く、胸の少し下あたりまでまっすぐに伸ばされている。くるりと丸い瞳にきゅっと小さな鼻と口。上半身のみでもすらりとした体形であることは見て取れる。実際プロフィールに目を落としてみると、身長こそ一五三センチとかなり小柄だが、体重もそれに見合った軽さである。幽霊には足がない、なんて話はよく聞くけれど、先輩の足はきっと細くて綺麗だったんだろうな、なんてことを想像してしまう。
「鼻の下を伸ばしている場合じゃないぞ、詠斗」
広げた資料にかかっていた手を叩かれたので顔を上げると、傑は真面目くさってそんな言葉を投げてきた。
「なっ、どうしたらそういう発想になるんだよっ」
と返しながらも、美由紀の足もとを想像していたなんて口が裂けても言えないなと思う詠斗である。傑はまたしても満足そうな顔で笑った。
詠斗はこの時ようやく美由紀がどんな顔をしているのかを知った。なるほど、あの穏やかな口調がよく似合う、良家のお嬢様っぽい綺麗な人だ。
写真で見てもわかるくらいのつや髪は黒く、胸の少し下あたりまでまっすぐに伸ばされている。くるりと丸い瞳にきゅっと小さな鼻と口。上半身のみでもすらりとした体形であることは見て取れる。実際プロフィールに目を落としてみると、身長こそ一五三センチとかなり小柄だが、体重もそれに見合った軽さである。幽霊には足がない、なんて話はよく聞くけれど、先輩の足はきっと細くて綺麗だったんだろうな、なんてことを想像してしまう。
「鼻の下を伸ばしている場合じゃないぞ、詠斗」
広げた資料にかかっていた手を叩かれたので顔を上げると、傑は真面目くさってそんな言葉を投げてきた。
「なっ、どうしたらそういう発想になるんだよっ」
と返しながらも、美由紀の足もとを想像していたなんて口が裂けても言えないなと思う詠斗である。傑はまたしても満足そうな顔で笑った。