どこから聞いてきたのか、穂乃果が言うには、たくさんの人の手でおなかに触れられることによって胎児はどんどん元気になるらしい。何かのおまじないなのだろうが、気持ちが不安定になりがちな妊婦にとっては、前向きな迷信なら信じるほうがいいのかもしれない。
ちなみにもう性別はわかっていて、どうやら男の子で間違いないようだ。ふたを開けてみたら実は女の子でした、なんて話も稀まれにあるようで、念のため男の子用と女の子用とで名前を二つ考えているらしいと母から聞かされていた。
「……元気に生まれてくるんだぞ」
そう言って、詠斗はそっと穂乃果のおなかをなでてやる。すると、何を思ってそう言ったのか穂乃果に悟られたようで、「こら」とすかさずデコピンが飛んできた。
「いって……!」
「うちの子の前で暗い顔しない!」
両手を腰に当てて説教じみたセリフを浴びせるも、すぐに穂乃果はその表情を崩して笑った。
「座って。あの人ももうすぐ帰ってくると思うから」
おなかの大きさを感じさせない軽やかな足取りで、穂乃果はカウンターキッチンへと向かう。言われるがまま、詠斗は四人掛けのダイニングテーブルに腰かけた。夕飯にしてはまだ少し時間が早い気がするので、先に美由紀の話をするほうがいいのだろうか、などとぼんやり考えていると、唐突にリビングの扉が開かれる様子が目に飛び込んできた。
ちなみにもう性別はわかっていて、どうやら男の子で間違いないようだ。ふたを開けてみたら実は女の子でした、なんて話も稀まれにあるようで、念のため男の子用と女の子用とで名前を二つ考えているらしいと母から聞かされていた。
「……元気に生まれてくるんだぞ」
そう言って、詠斗はそっと穂乃果のおなかをなでてやる。すると、何を思ってそう言ったのか穂乃果に悟られたようで、「こら」とすかさずデコピンが飛んできた。
「いって……!」
「うちの子の前で暗い顔しない!」
両手を腰に当てて説教じみたセリフを浴びせるも、すぐに穂乃果はその表情を崩して笑った。
「座って。あの人ももうすぐ帰ってくると思うから」
おなかの大きさを感じさせない軽やかな足取りで、穂乃果はカウンターキッチンへと向かう。言われるがまま、詠斗は四人掛けのダイニングテーブルに腰かけた。夕飯にしてはまだ少し時間が早い気がするので、先に美由紀の話をするほうがいいのだろうか、などとぼんやり考えていると、唐突にリビングの扉が開かれる様子が目に飛び込んできた。