入って、と促されるまま、詠斗は穂乃果に続いて部屋の中へと上がり込んだ。このマンションに越して来てもう一年になるはずだが、廊下もリビングルームも相変わらず少しの汚れも目立たないなと詠斗は感心してしまった。

 ちなみに詠斗がここへ来るのはかれこれ半年ぶりになる。半年前、本当ならば両親だけが呼ばれればよかったところを、何故か詠斗も半ば強制的にその場に立ち会わされたのだ。

「だいぶ立派になったね、おなか」

 そう。
 半年前、穂乃果の妊娠を祝う会に呼ばれたのが、詠斗がこの家に足を踏み入れた最後の日。

 あの時は見た目にはまったくわからなかったが、今の穂乃果はすっかり妊婦らしい姿になっていて、それだけで微笑ましい気持ちになれた。

「でしょー? もう八ヶ月だもん。今でも重たいのに、ここからさらに大きくなると思ったらちょっと恐ろしいくらい」

 ははっ、と笑いながら優しくおなかをさする穂乃果。詠斗もつられて笑顔になる。

「なでてやってよ、詠斗も」

 ほら、と手招きされるまま、詠斗は穂乃果のすぐ前に立つ。