帰りの電車に揺られながら、携帯のメッセージアプリを使って会って話がしたい旨の連絡を入れた。すると、
【五秒で仕事を終わらせて帰る。うちで飯メシを食っていけ。母さんと穂乃果にはこちらから連絡しておく】
という返事が三十秒と経たずに返って来た。詠斗はぐっと眉根を寄せる。
暇なのか?……いや、刑事部所属の現役刑事が暇であるはずがない。しかし、仮に暇でなかったとしても弟のためなら無理にでも暇を作るような男だ。おそらく、今回も。
だいたい、五秒で終わる仕事って何だ? 単純に仕事を放り出して帰ってくるだけなのでは――?
一気に重たくなった頭に、指の腹でこめかみをぐりぐりと押さえつける。これだからあの男には極力会いたくないのだ。