「先輩が言うには、その松村さんって人は犯人じゃないらしいんだ。なんで疑われてるのか知らないけど、とにかく無実であることを証明したい。そのためにもぜひ真犯人を見つけてほしい、というのが先輩から頼まれたことの全容」

 結局べらべらとしゃべってしまったことを若干後悔しながら、詠斗はひとつ息をつく。まったく、どうしていつもこうなるのか。

「なるほどね……。で? そのお願いを聞いてあげることにしたわけ?」
「……一応、やれるだけのことはやろうかと」

 そう正直に答えると、はぁ、と大きなため息をつかれた。

「なに安請け合いしてるのよ?! 殺人事件の捜査なんて、素人の高校生にできるはずないじゃない!」
「そんなこと俺にだってわかってるよ! けど……」

 そっと視線を右に逸らし、詠斗は少し間をおいてから再び口を開いた。

「せっかく、聴こえたから」