いつも通り、詠斗は右手に弁当箱を入れた袋を提げて中《なか》校舎の屋上へと向かって階段を昇る。去年は一階がホームルームだったけれど、今年は三階だ。一つ上がるだけで屋上へたどり着くことができる。ありがたい限りだ。
少し重い鉄の扉を押し開ける。今日も詠斗が一番乗りだった。
さっきまで強く吹き付けていた風はいつの間にか凪いでいて、適度に眠気を誘う陽射しと相まって非常に心地良い。転落防止柵のすぐ目の前に設置されている古い無機質なベンチに腰掛け、遠く街の様子や山並みを眺めながらランチタイムを過ごすのが詠斗の日課だった。
食事を始めて五分ほどが経っただろうか。
不意に、誰かが詠斗の肩を叩いた。
振り返ると、一人の女子生徒が見事な仁王立ちで詠斗を見下ろしている。詠斗は思わず眉を寄せた。
少し重い鉄の扉を押し開ける。今日も詠斗が一番乗りだった。
さっきまで強く吹き付けていた風はいつの間にか凪いでいて、適度に眠気を誘う陽射しと相まって非常に心地良い。転落防止柵のすぐ目の前に設置されている古い無機質なベンチに腰掛け、遠く街の様子や山並みを眺めながらランチタイムを過ごすのが詠斗の日課だった。
食事を始めて五分ほどが経っただろうか。
不意に、誰かが詠斗の肩を叩いた。
振り返ると、一人の女子生徒が見事な仁王立ちで詠斗を見下ろしている。詠斗は思わず眉を寄せた。