楽しげに笑った美由紀。もしかしてもてあそばれている? と思った時にはすでに手遅れで、このままでは美由紀の手のひらの上でいつまでも踊り続けることになりかねない。どうにかして流れを変えなくてはと気持ちを切り替えようとしたその時。

『……わかっているんです。こんなわがままが通用するはずがないと』

 先ほどまでの明るい雰囲気は消え、美由紀の声に哀愁が漂い始める。

『知子が無実なのは事実ですから、いずれ疑いも晴れるでしょう。捜査は難航しているようですけれど、真犯人だってきっと警察の方が捕まえてくださいます。私の想いは、今あなたに伝えました。せめてあなた一人だけでも、知子の無実を最後まで信じてあげてください』

 穏やかで落ち着いた声で紡がれたその言葉は、別れの挨拶のように聴こえてならなかった。
 このまま、美由紀の霊は天に召されていくのだろうか。
 今の言葉が、最後の言葉になってしまうのか――。