前から七列目が詠斗の座る最後列だ。この場所からだと、教壇に立つ者の唇の動きが読みづらい。あと二列だけ前の席だったら、と年度当初は毎回思う。そうは言うもののまったく読めないわけではないので、わざわざ席を替えてもらうことはしない。できる限り目立った動きはしたくないという思いが根底にあるおかげで、自分で自分の首を絞めている形だ。とはいえ、さすがに三年目ともなればいやでも慣れてくるわけで、特別不自由を感じることも少なくなってきていた。それがいいのか悪いのか、詠斗自身にもわからないのだけれど。

 結局、新しいクラス長がうまく取りまとめたおかげで残り十分で無事委員決めが終了した。何やらもめている様子だったので拍手ものだ。

 二時間目から四時間目までは、新しい教科担任の挨拶やら今後の授業の進め方やらを延々聞かされるだけの時間だった。そうして、ようやく昼休みの時間がやってきた。