「願い?」

 はい、と答えた美由紀に、詠斗は眉をひそめた。そういえば、この世に現れる霊というのは強い念の塊だという話を聞いたことがある。美由紀に関しても、何かどうしても成し遂げたいことがあるということか。

『私を殺した犯人を捕まえてもらうこと――それが私の願いです』

 詠斗の口がわずかに開いた。しかし、言葉が転がり出てくることはなく、ほぅ、という吐息だけが零れ落ちた。

 ――犯人を、捕まえる?

 確かに今、美由紀はそう言ったように聴こえた。
 誰かに殴られ、階段の上から放り投げられたという先ほどの話を頭の中で振り返る。