笑う声は聴こえないけれど、心の声にはいつだって耳を傾けていようと思う。

 美由紀の声が聴こえたように、紗友の声も受け止める。

 紗友だけじゃない。巧も、傑も、穂乃果も、そして知子の声も。


 たとえこの耳が、すべての音を失っていたとしても。

 聴こえないはずの声を聞き届けられる人になろう。


 それが、美由紀先輩の想いを汲んだ俺の生き方だ。


 詠斗が空を見上げると、紗友も一緒になって視線を上げた。

 青い青いこの空を泳ぐ綿菓子のような白い雲が、ふわりと笑ったように見えた。


【Voice -君の声だけが聴こえる- /了】